貿易は、異国間の商品取引。
「外国にいい商品がある！」それを買いたい人が、売り主に商品価格の見積りを依頼するところから、商売は始まります（モチロン、売り主が買い主を探してアプローチすることもありますよ）。
この場合、売り主は「メーカー」や、商売の間に入る「商社」。買い主は「卸売り」や「小売り」が多いですが、最近はネットの普及により「個人」もありえます（商品が "資源" である場合、売り主が「商社」、買い主が「メーカー」や「電力会社」の場合も。色々とパターンを考えてみましょう）。
さて、協和海運が結ぶ島国の人々は、日本の売り主からどのようなものを買い求めるのでしょうか。
答えは食料、生活用品から乗用車、建築資機材など、島の暮らしに必要なもの、さまざまです。一方、日本には農水産物、鉱山資源を、協和海運が結ぶ太平洋の島国に求める買い主がいます。これらの商品全てが、我々の貨物となりうるのです。
さて、買い主から商品価格の見積り依頼を受けた売り主は、その商品の売り値（海上輸送費用込み）を決めるため、船会社にその商品を目的地まで輸送した場合の「海上運賃」を問い合わせます。
ここが、我々船会社と売り主（荷送人）との*ファーストコンタクト。荷送人は、船会社に輸送したい商品（貨物）の明細（仕向け地、形状、荷姿、数量など）を伝え、運賃回答を待ちます。
*船会社が自らの輸送サービスを売り込み、商売につなげてもらうアプローチもあります。協和海運の【営業本部】は、島嶼国で予想される商売や、大型建設プロジェクトの情報をいち早くキャッチ。他社にさきがけたアプローチで、プロジェクトの実現を後押しします。
貨物の情報を基に、【営業本部】では提示する運賃を決めます。運賃＝輸送費用＋船社利益。
貨物輸送には、港での荷役（貨物の積み下ろし作業）、船の運航のための燃料にかかる費用、または船の建造料や、船を借りてくる場合は用船（チャーター）料といった費用がかかります。貨物の形状や荷姿によって荷役方法が変わり、数量によって消費するスペースが変わるので、船や港のエキスパートである【安全・運航本部】の助けを得ます。
費用の一方、適正な利益を乗せなければボランティアになってしまいます。こちらは、他船社の動向や運賃相場、貨物の運賃負担力を知る【営業本部】の腕の見せ所。日ごろの情報収集や、荷主との関係構築がものを言います。会社の利益のためには、なるべく高い運賃をいただけるのがもちろん良い。しかしその運賃が高すぎてそもそも売り主、買い主の商売が成立しなければ意味がなく、安すぎて船社が赤字になっても意味がない。非常に繊細な運賃提示が求められるのです。
船積み一回限りの運賃提示もあれば、長期間にわたる契約になる場合もあります。また、船のスペースの一部を提供するオファーもあれば、数量によっては一船まるごと提供するオファーもありえます。
船社から運賃提示を受け取った売り主は、買い主に「商品価格＋保険＋海上運賃」に利益を乗せて売値を提示します。
※買い主が船社に直接運賃を支払う貿易形態もあります。
売り主と買い主、双方合意すれば見事、売買契約が成立。
いよいよ輸出（船積み）へと動き出します。
売り主（荷送人）は船社にスケジュールを確認、希望の本船を指定して、ブッキング（船腹予約）を行います。
荷送人は船社に貨物明細を伝え、船社は船腹（船のスペース）を確認、空きがあれば輸送スペースを確保します。本船のスペースが埋まってくると、あとどのくらい貨物を取ることが出来るのか、緻密な集計が必要となります。
協和海運では、荷送人の窓口である【営業本部】がブッキングを取りまとめ、本船の窓口である【安全・運航本部】が*積み付けプランを作成、スペースを取りまとめます。
*積み付けプラン(Stowage Plan)
船をかたどった図に、貨物の積載場所を設計するプランニングシートで、貨物の荷役までに完成させます。協和海運では、【安全・運航本部】の「プランナー」と呼ばれる担当者（他社では「海務係」と呼ばれることも）が、本船の一等航海士や船長と連携し作成します。
フルコン船ではオートプランニングが主流ですが、協和は様々な形状の貨物を載せる多目的船。高度な知識と経験を活かし、人の手で作成しています。【営業本部】からはなるべく多くの貨物を積むプランが求められますが、実際に航海に出る本船は安全を最重視。船のトリムや復原性まで考慮に入れた計算が必要となります。
荷送人は船社からスペースを確保すると、船社からコンテナを借り受け、貨物を詰め込みます（バンニング）。
※協和海運の船は多目的船なので、コンテナに入らない大きな建築資材や機械、または自動車などをそのまま積むための設備も持っています！
荷送人は、貨物を輸出するため、通関をきる必要があります。
各港には所管の税関がありそこから輸出の許可を得るわけですが、実際には職員の検分を受けることは多くなく、オンライン上での申告で済む場合が多いようです（一般的には、輸出通関より輸入通関の方が難しいようです。理由は分かりますか？）。
さあ、いよいよ船積みです。
荷送人は貨物を本船の入港までに、港内の船社が指定した場所へ搬入します。船社も入港までに、荷送人から貨物の正確な検量結果や明細を書類で取り寄せ、B/L(船荷証券)やMANIFEST（積荷目録）作成の準備をします。
実際の貨物の船積み（荷役）は、先述の積み付けプランに基づき、現場の作業員が行います。本船で貨物に責任を持つ一等航海士と作業員の間に、フォアマン（荷役監督者）が立ち、荷役を円滑に進めます。
貨物の船積みが完了し、荷送人から運賃の支払いを受けた船社は、荷送人にB/L(Bill of Lading＝船荷証券)を発行します。
B/Lは貨物が本船に積み込まれたことを証明する書類であると同時に、貨物と等価（交換可能）である有価証券。荷送人は、荷受人からの商品代金支払いを条件に、B/Lを荷受人に譲渡することになるのです。
商売では、売り主と買い主に潜在的なリスクがあります。
売り主には、商品を届けたのに代金を回収できない可能性、一方買い主には、代金を支払ったのに商品を受け取れない可能性があり、それぞれのリスクとなります。その両方の解決を目指したのが、間に銀行をはさむ決済方法（L/C決済）。
間に銀行が入り仲介することで、荷送人は積み地の銀行に必要書類を提出すれば、代金支払いを確約され、荷受人は現地の銀行に代金を支払えば、商品の受け取りを確約されます。
荷送人は銀行に有価証券であるB/Lを提出、銀行はそれを商品代金と同額で「買い取る」形になります。これが可能なのは、B/Lが有価証券であり、貨物と同等の価値がある、と見なされるからです。
提出されたB/Lは、目的地の銀行まで発送されます。
荷受人は揚げ地の銀行にL/Cを開設済み。商品代金を銀行に払えば、現地に届いたB/Lを引き取ることが出来ます。荷受人が銀行からB/Lを「買い取る」かたちに見えます。
貨物を船から下ろすことを、「揚げる」といいます（おろす、なのに、あげるとは…）揚げ荷役も積みと同様、現地の作業員が行います。
協和海運の寄港地である太平洋の島々は、ショアクレーンのような荷役設備が整っていない港も多くあります。
そこで、当社独自の本船！船に備え付けのクレーンやランプウェイで、スムーズに荷役を行うことが出来ます。
船会社は、B/Lと引き換えに、荷受人に貨物を引き渡します。引き渡し場所は港内の船社指定地で、船側や、ヤード、倉庫などです。いずれにせよ、この貨物の引渡しによって、船社の責任は果たされたことになります。
買い主は無事、商品を入手しました。その商品を売る、加工するなど、それぞれの経済活動がはじまります。
協和海運が届ける島々は、生活物資のほとんどを船に頼っています。そのため船の入港は、とても待ち遠しいもの。当たり前の暮らしを支える、そのために協和海運は、これからも安定した配船サービスを続けていきます。
貨物を積載した本船は、大海原へいざ出港！
船長以下20名ほどのクルーが航海を担います。協和海運の本船は、通常13～15knotで走りますが、これは時速に直すと30km/h弱。ロードバイクほどのスピードということになります。意外とゆっくり、でしょうか？
さて、我々の結ぶ航路は台風の影響を受けやすい中部太平洋を通るため、しばしば悪天候に遭遇します。そんなときには、本社の【安全・運航本部】との連携のもと、適切なルート選択、貨物の保護がなされます。ちなみに、クルーの手配や本船のメンテナンスは、グループ内の船舶管理会社、「トリテック」の役割。それぞれの協力があってはじめて、安全な航海が実現するのです。
さあ、目的地の港が見えてきましたよ。いよいよ入港です。
「船会社」の仕事って…？？
貿易の始まりから貨物が届くまでを見てみよう
SCROLL
貨物船を運航する我々「船会社」の仕事は、お客様の商品（＝貨物）を輸送すること。貨物のやり取りは、売り主である「荷送人」（荷主、Shipperとも）と、 買い主である「荷受人」（受荷主、Consigneeとも）の間で行われます。 これに対し、船会社は Carrierと呼ばれます。「運送人」です。
ここでは、貿易の流れの中で我々船会社はどのように貨物の海上輸送を実現していくのか、 おおまかに見ていきましょう。
（それぞれの項目をクリックすると解説が表示されます）
